接触して温度を測りたいときのベストツール
非接触型の温度計は、対象物から距離を取ったまま温度を測定できる便利な道具ですが、状況によっては「実際に接触させて温度を測りたい」場面もあります。
たとえば、はんだこてのコテ先に直接センサーを当てて、どのくらいの温度になっているかを確認したいとき。あるいは、ヒートガンで加熱している対象物の表面温度を、吹き出し口のすぐ前で正確に測りたいとき。
そんなシーンで役立つのが 熱電対温度計(ねつでんついおんどけい)です。
熱電対温度計とは、異なる金属を接合したセンサー(プローブ)を対象に直接接触させて温度を測定する機器です。接触式ならではの安定した測定ができるうえ、構造がシンプルなローエンドモデルであれば、比較的安価に入手できるのも大きな魅力です。
電気・電子工作を行う中で、「正確な温度を把握したい」場面は意外と多いもの。そんなときに熱電対温度計が1つあると、測定の幅が一気に広がります。
本記事では、数ある熱電対の中でも最も広い温度測定範囲を持ち、電気工作でも定番となっている「Kタイプ」の熱電対温度計について、その特徴や選び方、使い方を詳しく解説していきます。
Kタイプ熱電対温度計の基本構造と仕組み
熱電対の仕組みと原理
熱電対は、異なる2種類の金属を接合すると、その接合点に温度差がある場合に微弱な電圧が発生する「ゼーベック効果」を利用した温度センサーです。この電圧は温度差に比例するため、測定点(ホットジャンクション)と基準点(コールドジャンクション)の温度差を元に、実際の温度を計算します。
中でもKタイプ熱電対は、「ニッケル・クロム合金(クロメル)」と「ニッケル・アルミ合金(アルメル)」を使用しており、高い耐久性と広い測定温度範囲を備えた、最も汎用的なタイプとして知られています。
Kタイプ熱電対の特長と基本情報
Kタイプ熱電対の測定範囲は、おおよそ -200℃~+1,260℃ と非常に広く、反応速度も速いため、多くの工業用途において標準的に使われています。
さらに、次のような特長があります:
- 価格が手頃で入手しやすい
- 耐酸化性に優れ、長時間使用でも性能が安定
- 幅広い分野で使える(工業、食品、研究、電子工作など)
このような理由から、個人の電子工作やDIY用途にも適しており、「1台持っておくと何かと使えるセンサー」として重宝します。
他の熱電対との比較
Kタイプ以外にも、用途に応じてさまざまな熱電対の種類があります。以下は代表的な比較です:
- Jタイプ:鉄とコンスタンタンの組み合わせ。中温域向け。安価だが酸化に弱く、寿命が短め。
- Tタイプ:銅とコンスタンタン。精度は高いが、主に低温(-200℃〜+350℃)向け。
- Eタイプ・Nタイプ・R/Sタイプなども存在するが、用途や価格帯がかなり専門的。
このように、Kタイプは広い温度レンジとコストのバランスが優れた“万能型”として、多くのシーンにマッチします。
工業分野や電子工作分野での活用例
Kタイプ熱電対は以下のような現場で活躍しています:
- 工業分野:製造ラインでの温度管理、炉内部の温度計測、溶接時の局所加熱測定など
- 研究・食品業界:加熱・冷却装置の温度記録、品質管理用温度測定
電子工作分野でも、たとえば MAX31855 などの熱電対センサーモジュールを使えば、ArduinoやRaspberry Piと連携させて温度のロギングやPID制御も可能です。最近はUSB接続タイプやBluetooth対応の高機能モデルも増えてきており、データ出力にも対応しています。
とはいえ、最初の1台として購入する場合は、単純に温度を測るだけのシンプルなモデルがおすすめです。操作が簡単で使いやすく、価格も安価なため、入門には最適です。
熱電対温度計の実際の使い方・注意点
基本的な使い方
- 電源を入れる
- 熱電対温度計の電源をONにします。電池式のポータブルタイプが一般的です。
- プローブを接続する
- 付属または別売りのKタイプ熱電対プローブを本体に接続します。極性がある場合は差し間違いに注意しましょう。
- 測定対象にプローブを当てる
- 温度を測りたい部品・対象物に、プローブの先端(センサー部分)をしっかり密着させて接触させます。
- 空中に浮かせたり、軽く触れるだけだと正確な値が出ません。
- 耐熱性に優れて糊がベタつかないポリイミドテープ(カプトンテープ)などでプローブを固定すると、安定して温度を測れます。
- 温度表示を確認する
- 画面に現在の温度が表示されます。機種によっては最大・最小温度、平均温度、℃/℉の切り替え機能などがあります。
私が実際に使用しているおすすめのポリイミドテープセットはこちらです。
幅の異なる6種類のテープがセットになっていて、価格は1200円前後(購入時)とコスパ抜群。注文後すぐに届くので、急ぎの作業にも対応できます。
電子工作や熱対策、はんだ付け中のセンサ固定、3Dプリンタのベッドシート代用など、用途が幅広く、1セット持っておくと本当に便利です。
耐熱性・耐薬品性に優れており、高温でも糊がベタつかず剥がした後も汚れにくいのもポイントです。

使用上の注意点
- センサー部は繊細です
Kタイプのプローブ先端は物理的な衝撃や曲げに弱いため、強く押しつけたり、引っ張ったりしないようにしましょう。断線すると正しい温度が測れません。 - 反応速度に差が出る
薄くて小さいプローブは反応が速くなりますが、高温では耐久性に注意。逆に金属棒型のしっかりしたプローブは丈夫ですが反応は遅めです。 - 金属面や放熱の大きい物体の測定は慎重に
熱がすぐ逃げる対象(アルミや銅など)を測定する場合、短時間で正確に当てる必要があります。測定が不安定になりやすいので、固定具があると便利です。 - 非接触タイプとの併用も有効
高温域ではプローブが直接当てられないこともあります。赤外線温度計(非接触型)と併用して、温度の見当をつけてから詳細をKタイプで測る、という使い方も便利です。 - 誤差がある前提で使う
Kタイプ熱電対は精密機器ではありません。数℃の誤差が出ることは普通なので、「目安としての測定」に割り切って使いましょう。より高精度が必要な場合は、専用の高精度測定器や校正済みモデルが必要です。
DIY用途なら「気軽に使えること」が最大の利点
電子工作やDIYにおいては、「とりあえず温度が知りたい」「ヒーターがちゃんと加熱しているかを確認したい」といったラフな使い方が多いはずです。そのような場面では、Kタイプ熱電対温度計の丈夫で壊れにくく、安くて使いやすいという特性がとても頼りになります。
特に、はんだごての温度確認や加熱中のケース内温度をモニターする時など、ちょっとした実験や検証で重宝します。
私が実際に使用している熱電対温度計
激安シンプルなTM902C だがそれがいい!
私が所持し、使用しているのは、本体とプローブがセットで1000円以下で買えるTM902Cというローエンドモデルです。
機能は本当に、電源を入れて温度を表示するだけしかありません。しかし、その無駄な部分のないシンプルな操作性が、温度を計れればいいだけの状況であれば、却って使いやすいです。
勿論Amazonで購入可能で、注文すれば早ければ翌日配送なのですぐ使えます。
私が普段使っているのは、「TM902C」というローエンドモデルの熱電対温度計です。
本体とプローブがセットになっていて、価格は1000円以下(購入時)という圧倒的な安さ。
機能は本当にシンプルで、電源を入れるとすぐに温度が表示されるだけ。
しかしその「余計な機能が一切ない」シンプルさこそが、使いたいときにすぐ使えてストレスがないという点で非常に優秀です。
もちろんAmazonで購入可能で、早ければ翌日には届くので、急ぎで必要な場面でも安心です。


使用電池とおすすめ電池セット
TM902Cは、9Vの006P角形電池で動作します。これはローエンドの測定器でよく使われているタイプで、単3・単4ほどメジャーな電池ではありませんが、ダイソーなどの100均でも購入可能です。
私自身は、使用頻度が高いため、充電式のニッケル水素006Pを10本ほど常備しています。
もし初めて買う場合は、Amazonで購入できる約1600円で2個セットの006P充電池がおすすめです。長期的に見ればコスパも良好です。

プローブの交換も簡単&安価で安心
TM902Cのもうひとつの魅力は、プローブが安く・簡単に手に入ることです。
消耗品であるプローブは、使っているうちに断線したり劣化したりすることもありますが、Amazonで4本セットが約700円で買えるので、気軽に予備を持っておけます。
これもまた、「長く使える安心材料」として、TM902Cをおすすめできる理由のひとつです。

Kタイプ熱電対温度計は電子工作で役立ちます
非接触では難しい、はんだごての先端温度やヒートガンの加熱対象の温度を正確に測りたいとき、Kタイプ熱電対温度計は非常に便利なツールです。
Kタイプは広い温度範囲に対応し、コストパフォーマンスにも優れているため、電子工作を趣味とする方やDIYユーザーにも扱いやすい選択肢です。特にローエンドモデルは安価で手軽に入手できるので、1台持っておいて損はありません。
使い方も簡単で、プローブを測定対象にしっかり接触させるだけ。固定にはポリイミドテープを使うと安定した計測が可能になります。私が使用している「TM902C」や交換用プローブ、さらには便利なテープセットなど、すべてAmazonなどで手軽に揃えられるのも大きな魅力です。
「温度を測りたい」と思っても、手元に測定具がなければどうしようもありません。
逆に、格安品でもちゃんとした道具が揃っていれば簡単に測定できるし、作業効率や安全性も大きく向上します。
ぜひ、あなたの電子工作環境に、Kタイプ熱電対温度計を加えてみてください。